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神社紹介 第5話|東京都文京区「根津神社」|都会のまんなか、静けさと賑わいが同居する場所

第5話|根津神社 ── 都会のまんなか、静けさと賑わいが同居する場所

下町の風情に包まれて

「わあ、なんだか道が細くなってきたよ」
ハッチが、路地の奥へとゆっくり歩を進める。

「うん。木造のお家がいっぱい並んでる」
ココロは少し低く飛びながら、家並みを眺めていた。
「ここ、東京だよね? まるで昔のまま時間が止まってるみたい」

地下鉄の出口を出て、ほんの少し歩いただけなのに、
このあたり一帯は“下町”という言葉がぴったりの風景だった。
車も入れないほど細い路地の先に、人々の暮らしと歴史がひっそりと息づいている。

そんな静かな街並みの中に、突然、大きな鳥居が現れる。
根津神社だ。

境内に広がる、静けさと賑わい

境内に足を踏み入れると、思った以上に広々としていて驚いた。
すでにたくさんの参拝客で賑わっている。

「観光の人かな? 地元の人も多い気がするね」
ハッチが小さくつぶやく。

「でも、不思議とざわざわしないね」
ココロがそっと羽をたたむ。

赤く彩られた楼門をくぐり抜けると、空気がすっと澄んだ。
そこから本殿へと続く参道、そして社殿は、どこか控えめで、優しい佇まいをしていた。

「この神社、もともとは千年以上前からあるって言われてるんだって」
ハッチが本殿の説明板を見ながら教えてくれる。

「そんなに古くから? すごいね」
ココロはそっと手を合わせた。

乙女稲荷と、春を待つつつじヶ岡

境内の一角には、赤い鳥居がずらりと並ぶ小道があった。
乙女稲荷神社の参道だ。

「これは……すごい迫力だよ!」
ハッチの声が、ちょっとだけ弾んでいる。

細い石畳に沿って、いくつもの鳥居が並び、まるで赤いトンネルのよう。
その中をたくさんの人たちが、ゆっくりと、でも途切れることなく歩いていた。

「乙女稲荷って名前も素敵だね。かわいい響き」
「うん。鳥居のトンネルをくぐるたびに、願いが少しずつ届いていくみたいだね」
ふたりは、静かにその中を歩いた。

季節は秋。
境内の名所「つつじヶ岡」は、いまは緑に包まれていたけれど、
そこに春の色が戻ってくる季節を、想像するだけで少し心が浮き立った。

📝 ハッチの絵日記より

「町の静けさと、人のにぎわいと、神社のやさしさ。
根津神社は、どれもがちょうどよくて心地よかったな。
今度は“つつじ”が咲くころに、また来ようっと」

基本情報|根津神社(ねづじんじゃ)

  • 所在地:東京都文京区根津1-28-9
  • 御祭神:須佐之男命、大山咋命、誉田別命
  • 由緒:創建は日本武尊の時代とも伝えられ、現在の社殿は1706年に徳川綱吉によって奉納されたもので、国の重要文化財に指定されています。
  • 見どころ:乙女稲荷神社の千本鳥居、春のつつじ苑、唐門・楼門など江戸建築の粋
  • アクセス:東京メトロ千代田線「根津駅」または「千駄木駅」徒歩5分
  • 拝観時間:参拝自由(社務所 9:00~17:00頃)
  • 公式サイト:https://www.nedujinja.or.jp/

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