第4話|高津神社
── 登るたびに、心がまっすぐになる場所
「ここを上るたびに、なんだか、現世とは違う場所に近づいていくような気がするよ」
参道の階段を、ハッチが一段ずつ踏みしめながら言った。
ココロはふわりと浮かんでその横を飛びながら、小さくうなずく。
「うん、それって、怖さとか圧力じゃなくて、自然と“身を正そう”って思える感じなんだよね」


心がまっすぐになる参道
やがて見えてきた拝殿は、静かに、でも確かにこの土地の中心に鎮座していた。
あたりはきれいに整備され、木々が本殿を包むように守っている。
すこし高台にあるせいか、大阪の町を見下ろすように、この神社はそこに在った。
「まるで町全体を見守ってくれてるみたいだね」
「うん。しかも、すごく“今”とつながってる感じがする」
そう言って、ハッチは授与所の掲示を見つめた。


町とともに生きる神社
「地元の人とのつながりも大切にしているんだね」
ココロが興味深そうに見つめる先には、季節の催しや演芸祭の案内が並んでいた。
「うん、奉納イベントとか、地元商店街との交流とか、いろんな活動をしてるみたいだよ」
ハッチの声は、どこか嬉しそうだった。


受け継がれてきた想い
境内の奥へと進んでいくと、大きな神輿庫(しんよこ)が見えてきた。
「この神輿庫、江戸時代の“宝暦年間”(1750年代)から続いてるんだって」
ハッチがそう言って、目を丸くした。
「えっ、あの時代から? それって…」
「うん。地震や戦火、いろんな災害をくぐり抜けて、こうして令和の今に残ってるんだ。すごいよね」
「大切に守ってこられたんだね、この神社と一緒に」
拝殿の前に立つと、そこが仁徳天皇をお祀りしている神社であることをあらためて意識した。


「高津神社のご祭神は、仁徳天皇なんだよ」
ハッチがそっと言った。
「仁徳天皇って、どんな人だったの?」
「昔、民家から立ち上る“かまどの煙”が少ないのを見て、庶民の暮らしが苦しいって気づいたんだ。
それで、すぐに税をやめて、国を挙げて助けたっていう話が残ってる」
「…すごい。そんな思いやりのある人が、今も神様として、この場所にいるんだね」
ハッチとココロは、そっと手を合わせた。
ここに立っていると、
“まっすぐに生きよう”と、背中を押されるような気持ちになる。
静かで、強くて、どこまでもやさしい神社。
高津神社は、そんな空気に包まれていた。


📝 ハッチの絵日記より
「神様のやさしさって、静かだけど、ちゃんと届いてる気がするんだ。
高津神社で感じたのは、“ちから”よりも、“思いやり”だったよ。」
基本情報|高津神社(こうづじんじゃ)
- 所在地:大阪府大阪市中央区高津1丁目1-29
- 御祭神:仁徳天皇(にんとくてんのう)
- 由緒:古代から信仰の対象とされ、江戸時代に整備されたと伝えられています。民の暮らしを思いやった仁徳天皇をお祀りしています。
- 見どころ:江戸・宝暦年間から残る神輿庫、高台から町を見守るような境内、地元に根ざした奉納イベントや演芸祭
- アクセス:Osaka Metro「谷町九丁目駅」より徒歩約5分、近鉄「大阪上本町駅」より徒歩約10分
- 拝観時間:参拝自由(社務所は9:00~17:00頃)
- 公式サイト:https://www.kouzu.or.jp/