ことのは帳

ことのは帳 第3話「ことだま」

ナビゲーター:Gen & Ritchi(神社ログ編集部)

ことのは帳 第3話|ことだま

── 声に出すことで、息づくもの ──

「ねぇ、ココロ。“ことだま”って、本当にあると思う?」

ハッチの問いかけに、ココロは一拍おいて、そっと答えた。

「言葉って、届くんだよ。目に見えなくても、ちゃんと。」

■ ことだまという言葉

「ことだま」とは、古くから日本にある考え方で、「言葉に宿る力」を指します。

たとえば、祝詞や和歌、名前や願いごと——声に出すことで、そこに特別な力が宿ると信じられてきました。

それは目に見えるものではなくても、人と人、人と自然をつなぐ、静かな“結び”のような力だったのです。

■ 美しい言葉には、美しい力が宿る

「ありがとう」「おはよう」「だいじょうぶ」——

そんな何気ない言葉にも、あたたかな力が宿っていて、
誰かの心にそっと触れることがあります。

一方で、傷つけるような言葉や、投げやりなひと言にもまた、
消えないちからがあることを、わたしたちは時々忘れてしまいます。

言葉は、ただの音ではない。
それは、誰かの“景色”になってしまうほどの力を持っているのです。

たゆたう空気を感じるハッチとココロのイラスト

■ ハッチとココロの会話

「ことばって、道みたいだね」

「うん。届けたい相手がいるときほど、きれいに掃きたくなる」

「じゃあ、今日は“ありがとう”から始めてみようかな」

「…それ、きっと届くと思う」

■ しめくくりのことのは

ことだま──それは、発した人にも、受け取った人にも、そしてその場にあるすべてのものにも、静かに息づくもの。

言葉の力を信じることは、生き方そのものを見つめること。

ハッチは、次に言葉を発するとき、いつもより少しだけ息を整えようと思いました。

次回のテーマ ▶︎ 第4話「みたま」
目には見えないけれど、たしかに“そこにある”もの。
魂、気配、存在の温度をめぐるお話です。

-ことのは帳

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