ことのは帳

ことのは帳 第2話「たゆたう」

ナビゲーター:Gen & Ritchi(神社ログ編集部)

ことのは帳 第2話|たゆたう

── こころに余白を残すもの ──

「ココロ、“たゆたう”って、どういうことだと思う?」

川沿いの小道を歩きながら、ハッチがふと立ち止まった。風が木々を揺らし、光の粒が水面にやさしく踊っている。

「うん…きっと、“決めなくていい時間”のこと、かな。」

■ たゆたうという言葉

「たゆたう」とは、日本語の古語で、「ゆらゆらと揺れ動く」「定まらず漂う」といった意味を持つ言葉です。

水の流れ、空にただよう雲、春の霞──そんな自然のゆらぎのなかに、たゆたうという言葉の気配が息づいています。

どこかへ向かっているようで、そうでもない。
留まっているようで、動いている。

「決めないこと」を肯定してくれるようなやさしさが、「たゆたう」にはあるのです。

■ “迷い”ではなく、“ゆらぎ”としてのたゆたう

たゆたう気持ちを、私たちは時に「迷い」として捉えてしまうけれど、

神社の境内に立ってみると、それはむしろ「余白」のように感じられます。

たとえば――

  • 手水の水面に映る、ぼんやりとした空。
  • 風にゆれる葉の音。
  • ゆっくりと流れる、ひとときの時間。

それらはすべて、「いま・ここ」にただいることの証。

揺れながら、それでもやさしく続いていく。

たゆたう空気を感じるハッチとココロのイラスト

■ ハッチとココロの会話

「“たゆたう”って、歩く速度も心の動きも、合わせていい感じがするよね」

「うん。“ゆらぎ”があるから、風も光も、きれいなんだと思う」

「急がなくていいって、神社は教えてくれるんだね」

「だから、ここに来ると、心がゆるむんだと思う」

■ しめくくりのことのは

たゆたう──それは、流されるのではなく、ただ“いま”を感じながら漂うということ。

揺れることを許す心こそが、静けさの本質なのかもしれません。

川の音がやさしく響くなか、
ハッチは水面を見つめ、そっとまばたきをした。

次回のテーマ ▶︎ 第3話「ことだま」
声に出すことで力を宿す――“ことだま”という言葉には、日本語への敬意が込められています。
ハッチとココロと一緒に、“言葉のちから”を探しに行きましょう。

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