ことのは帳

ことのは帳 第6話「よすが」

ナビゲーター:Gen & Ritchi(神社ログ編集部)

ことのは帳 第6話|よすが

── なにかを思い出す、心の手がかり ──

「ココロ、“よすが”って、どんなもののことだと思う?」

静かな木陰で、ハッチが空を見上げながらつぶやいた。

「うーん…昔の写真とか、古い手紙とか。さわると、心があったかくなるものかな」

「それって、“思い出の入り口”みたいだね」

「うん。今をつなぐ、優しい道しるべだと思うな」

■「よすが」とは

「よすが」は、古語で「縁(よ)す処(が)」が語源とされ、
寄りどころ・手がかり・縁(えにし)を意味する日本語です。

目には見えないけれど、心の中にしっかりと残る“なにか”。
それは、離れてしまった人や遠い記憶と、今をつないでくれる大切な橋のような存在です。

■「モノ」が「コト」を運んでくる

たとえば、誰かにもらったお守り。
旅先で出会った小石。
ふと手にした和紙の質感に、過去の記憶がにじんでくるような時もあります。

「よすが」は、物や言葉、風景のなかに静かに息づいているのです。

■ よすがを持つということ

よすがは、「よりかかる」ためのものではなく、
「思い出す」ための静かな扉です。

誰かを恋しく思った時、ひとりでいるのが寂しい夜、
そんなときにそっと寄り添ってくれるのが「よすが」。

それは、心が歩いてきた道の証であり、これから歩いていく道の灯でもあります。

たゆたう空気を感じるハッチとココロのイラスト

■ ハッチとココロの会話

「よすがって、心の中にある“おまもり”みたいだね」

「うん。さわれないけど、なくなったわけじゃない」

「僕も、きっと誰かの“よすが”になれたらいいな」

「もう、なってると思うよ。やさしい気持ちって、ちゃんと伝わってるから」

■ しめくくりのことのは

よすが──それは、誰かの気持ちと自分を結ぶ、透明な糸。

過去を懐かしむことで、未来を信じられるようになる。

そんな風に、「思い出すこと」は生きることと繋がっているのです。

次回のテーマ ▶︎ 第7話「たまゆら」
ふとした瞬間に心に灯る、なにかの記憶や気配。
それは魂がふれた証かもしれません。
ハッチとココロとともに、“たまゆら”の光を探します。

-ことのは帳

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